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税理士が税務職員に脱税工作依頼 納税者への重加算税は不当
● 税理士が税務職員に脱税工作依頼
● 納税者への重加算税は不当
脱税工作を依頼したのは関与した税理士であって、納税者は加担していないので重加算税を課すのは不当とした判決。
| 税目 | 所得税 |
| 国側当事者 | 雪谷税務署長 |
| 判決日等 | 平成18年4月20日判決 |
| 判決結果 | 国側一部敗訴(確定) |
| 事件番号 | 最高裁判所平成17年(行ヒ)第9号 |
1 事件の概要
(1) 本件は、脱税工作を税務職員に依頼したことに関し、贈賄・脱税の罪で起訴され実刑判決を受けたK元税理士(以下「K」という。)が関係した一連の不正申告事案の1つである。
(2) 納税者は、平成8年11月、居住していたN区の土地・建物(以下「本件物件」という。)を売却し、同月、Y区マンションを取得して転居した。
(3) 納税者から本件物件の譲渡に係る申告手続を任された納税者の夫(以下「夫」という。)は、平成9年2月初旬に雪谷税務署で申告の相談をし、納税額が800万円程度になるとの説明を受けた。また、夫は、同人の長男にも相談をしたところ、800万円程度の納税額となるとの説明を受け、その計算をしたメモ(以下「長男メモ」という。)を受け取った。
(4) 夫は、平成9年2月18日、Kの事務所を訪ね、本件物件及び購入したマンションの売買契約書等を提示し、本件物件を売却し、新たにマンションを購入したこと及び本件物件の譲渡費用等を説明し、併せて長男メモを示した。
(5) Kは、自身でも国税・地方税の計算を記載したメモを示しながら、税額の合計が806万円になることを説明した後に、「550万円で収めてやるから、それ以外に事務員へ10万円の謝礼をしてください。」などと言って、申告手続を受諾する旨を申し出た。
(6) 夫は、納税額が謝礼込みの560万円で済む理由を一切問うことなくKに申告手続を依頼し、その翌日には560万円の金員と印鑑をKに届けた。
なお、納税者らは、それ以後、Kに申告書の控や納税に関する領収書等の交付を要求したことはなく、接触も一切しなかった。
(7) Kは、本件物件の譲渡に係る申告に際し、架空経費(架空取得費)を計上した納税額0円の確定申告書(以下「本件確定申告書」という。)及び「譲渡のお尋ね」を作成し、それらに虚偽の住所地を記載して、平成9年3月5日(期限内)に管轄外であるC税務署長に提出した。
(8) 平成9年10月、査察部がKの調査として納税者に接触したことから、納税者は、自己の確定申告書が虚偽の住所によりC税務署長に提出されていること及び同申告書の納税額が0円となっていることを知った。
(9) 納税者は、平成9年11月14日、本件物件の譲渡に係る損益並びに居住用財産の譲渡所得の特別控除及び居住用財産を譲渡した場合、長期譲渡所得の課税の特例(以下「本件特例」という。)の適用に必要な書類を添付し、本件特例を適用する旨を記載した修正申告書を課税庁に提出(以下「本件修正申告」という。)した。
(10)課税庁は、平成10年2月3日、本件修正申告に対し重加算税の賦課決定処分を行い、翌日に本件特例の適用を否認する更正処分及び重加算税の賦課決定処分(以下「本件各処分」という。)をそれぞれ行った。
(11)納税者は、本件各処分の取消しを求め、適法な不服申立てを経て平成11年2月、本訴(課税事件)を提起し、課税事件結審後、平成13年7月に国家賠償請求訴訟を提起した。なお、当該国家賠償請求事件は、本件と併合された。
(12)平成15年6月27日、東京地裁は、a課税事件については、過小な申告には正当な理由があったとして重加算税及び過少申告加算税の全部を取消したが、本件特例の否認は適法とする判決を、b国家賠償請求事件については棄却とする判決を言い渡した。
(13)課税庁は、平成15年7月11日に課税事件について控訴したところ、納税者は課税事件と国家賠償請求事件の両方について附帯控訴した。
(14)平成16年9月29日、東京高裁は、一審の取消事項に加えて、本件特例を否認した更正処分についても違法として取消した。
(15)課税庁は、平成16年10月13日に課税事件について上告受理申立てをしたところ、最高裁第一小法廷は平成18年2月2日付で、本件を上告審として受理する旨の決定を行った。
2 判決要旨
(1) 国税通則法68条1項の重加算税の制度は、納税者が過少申告をするにつき隠ぺい又は仮装という不正手段を用いた場合に、過少申告加算税よりも重い行政上の制裁を課すことによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適法な徴税の実現を確保しようとするものである。
(2) 国税通則法68条1項は、「納税者が・・・隠ぺいし、又は仮装し」と規定し、隠ぺいし、または仮装する行為(以下「隠ぺい仮装行為」という。)の主体を納税者としているのであって、本来的には、納税者自身による隠ぺい仮装行為の防止を企図したものと解されるが、納税者以外の者が隠ぺい仮装行為を行った場合であっても、それが納税者本人の行為と同視することができるときには、形式的にはそれが納税者自身の行為でないというだけで重加算税の賦課が許されないとすると、重加算税制度の趣旨及び目的を没却することとなり、納税者が税理士に納税申告の手続を委任した場合についていえば、納税者において当該税理士が隠ぺい仮装行為を行うこと若しくは行ったことを認識し、又は容易に認識することができ、法定申告期限までにその是正や過少申告防止の措置を講ずることができたにもかかわらず、納税者においてこれを防止できずに隠ぺい仮装行為が行われ、それに基づいて過少申告がされたときには、当該隠ぺい仮装行為を納税者本人の行為と同視することができ、重加算税を賦課することができると解するのが相当であり、他方、当該税理士の選任又は監督につき納税者に何らかの落ち度があるというだけで、当然に当該税理士による隠ぺい仮装行為を納税者本人の行為と同視することができるとはいえない。
(3) 省略
(4) 過少申告加算税は、過少申告による納税義務違反の事実があれば、原則としてその違反者に対し課されるものであり、これによって、当初から適法に申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに、過少申告による納税義務違反の発生を防止し、適正な申告納税の実現を図り、もって納税の実を挙げようとする行政上の措置であり、主観的責任の追及という意味での制裁的な要素は重加算税に比して少ないものである。
(5) 国税通則65条4項は、修正申告書の提出又は更正に基づき納付すべき税額に対して課される過少申告加算税につき、その納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちにその修正申告又は更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由があると認められるものがある場合には、その事実に対応する部分についてはこれを課さないこととしているが、過少申告加算税の趣旨に照らせば、同項にいう「正当な理由があると認められる」場合とは、真に納税者の責めに帰することができない客観的な事情があり、過少申告加算税の趣旨に照らしても、なお、納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である。
(6)省略


