従業員が横領した会社の金銭
● 従業員が横領した会社の金銭
● 税務署が申告漏れで課した重加算税で判決
商品仕入れを担当していた社員が、仕入先と結託して架空の仕入れを行い、自社からその仕入先に振り込まれた代金を受け取っていた。その架空仕入れの代金相当額について、税務署が仕入れの水増しとして課した重加算税を裁判所も適法とした。
| 税目 | 法人税 |
| 国側当事者 | 長浜税務署長 |
| 判決日等 | 大津地方裁判所 平成17年12月5日判決 |
| 判決結果 | 請求棄却(確定) |
1 事件の概要
(1)甲社(製造販売業等)の従業員Tは、仕入先である乙社の取締役H及び丙社の代表取締役Mと共謀して、平成9年10月頃から平成14年6月頃までの間、多数回にわたり、Hが架空の送り状、請求書等を偽造してTに交付し、Tがこれらを乙からの正規の仕入に係る伝票類に紛れ込ませる方法により、甲社が乙から仕入れたように仮装した(以下「本件架空仕入れ」という。)。
(2)甲社の経理担当者は、本件架空仕入れに基づき、乙に対し振込等により金員を支払い、そして、甲社は、各事業年度において乙に支払った金員をすべて仕入として帳簿に記載し、その記帳に基づき法人税及び消費税等の確定申告を行なった。
(3)課税庁は、甲社の調査を行ったところ、Tによる本件架空仕入れの計上が認められたことから、甲社に対し修正申告の提出しようとしたところ、甲社は修正申告書を提出した。
(4)課税庁は、Tの行った本件架空仕入れは、甲社が行ったものであるとして、重加算税の賦課決定を行った。
2 争点
従業員Tが行った架空仕入れをもって、甲社が隠ぺい・仮装をしたと評価できるか否か(重加算税賦課決定処分の適否)。
3 裁判所の判断のポイント
(1)通則法68条(重加算税)の趣旨は、同法65条ないし67条に規定する各種の加算税を課すべき納税義務違反行為が事実の隠ぺい、または仮装という不正な方法に基づいて行われた場合に違反者に対して課される行政上の措置であって、故意に納税義務違反を犯したことに対する制裁ではないから、同法68条1項による重加算税を課し得るためには、納税者が故意に課税標準等、または税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠ぺいし、または仮装し、その隠ぺい・仮装行為を原因として過少申告の結果が発生したものであれば足りるものと解される。
(2)法人に重加算税を賦課できるのは代表者ないし経営者が隠ぺい・仮装をしたか、または代表者ないし経営者と同視できる従業員が隠ぺい・仮装等をした場合に限られると限定的に解することは、法人の経済活動の実態や重加算税制度の趣旨から見て相当とはいえない。
(3)本件においては、1)甲社は、従業員を手足として経済活動を行っている会社で、仕入業務は甲社の業務の中でも中核的なものであること、2)Tはその業務を長年ほぼ一人で担当し、単価についてのチェックを受ける以外には特段のチェックもなく、現実に仕入れがなされたかについての確認もされておらず、平成9年以降平成14年までの長期間にわたり多数回に及んだ本件仮装行為は、T自らの告白で初めて発覚したものであること、3)代表者らは、Tを懲戒解雇後も別会社で雇用し甲社の仕入業務をわざわざ担当させていることから、Tの担当していた業務は容易に他の者が交替できないものであり、Tが取り仕切っていたものであることが認められる。
(4)上記事実関係の下では、Tは甲社の仕入業務を任されており、その責任者として甲社の経営上重要な地位にあったものということができる。そして、そのような地位にあったTが職務の範囲内の行為である正規の仕入れの中に紛れ込ませて、外形的には同一の本件架空仕入れを行ったのであるから、Tがした仮装は、甲社の仮装と同視することができる。したがって、重加算税賦課決定処分は適法である。


