パチンコ店出店妨害で3億円
● パチンコ店出店妨害で3億円
● 裁判所「出店協力金ではなく雑所得」
パチンコ店の出店を妨害した上で、パチンコ店から受け取った3億円は偶発的な所得ではなく、裁判所も雑所得という判決を下した。
パチンコ店から収受した金員は一時所得か雑所得か
| 税目 | 所得税 |
| 国側当事者 | 東税務署長 |
| 判決日等 | 大阪地方裁判所 平成17年9月14日判決 |
| 判決結果 | 請求棄却(相手方控訴) |
1 事件の概要
(1)納税者は、歯科医師業を営む青色申告者である。
(2)課税庁は、納税者がパチンコ店の出店予定地前に入院用ベッド設備(以下「本件設備」という)を有する歯科診療所を開設して出店を妨害し、本件設備の撤去を条件に同パチンコ店から3億円の金員(以下「本件金員」という)を収受していた事実を調査により把握した。その際、納税者は、本件金員のうち1億3千万円(以下「本件交付金員」という)を、パチンコ店とのトラブルの仲介を行った者(以下「本件仲介者」という)に支払ったと主張した。
(3)課税庁は、本件金員を雑所得として申告するよう指導したが、納税者が本件交付金員を必要経費として控除した上で一時所得として修正申告したため、更正処分を行った(13.6.25)。また、本件金員の収受に当たり他人名義を使用したことから、重加算税の賦課決定処分をあわせて行った。
(4)納税者は、適法な不服申立手続を経て本訴を提起した。第一審大阪地裁は、納税者の請求を棄却する判決を言い渡した(17.9.14)。
2 争点
(1)本件金員の所得区分(一時所得か雑所得か)
(2)本件交付金員の必要経費該当性
3 裁判所の判断のポイント
(1)納税者は、本件金員は、右翼団体の街宣活動による執拗な圧カ等納税者とパチンコ店との間に発生した紛争を解決するため、納税者がパチンコ店から受けた申し出により生じた偶発的、一時的な所得であると主張する。しかしながら、[1]納税者が実施する口腔外科治療及びインプラント冶療は、24時間体制をとることや患者を入院させる必要はなく、納税者の他の診療所には入院用のベッド設備がないこと、[2]実際にインプラント術を行うことのできない医師が配され、治療の実績もほとんどないこと、[3]パチンコ店から納税者に金員の支払を条件に診療所の本件設備の撤去の申入れがされた際、納税者自ら約15億円の支払を要求していること等の事情を考え併せると、納税者は、診療所が保護物件としてパチンコ店に係る風俗営業許可の取得を妨げるものであることを認識した上、本件設備の撤去等と引換えにパチンコ店の経営者から多額の金員を収受する目的で、診療所の開設手続を行ったものと推認することができ、納税者本人の供述中この認定に反する部分は採用できない。
(2)以上によれば、本件金員は、納税者が診療所から本件設備を撤去してパチンコ店の風俗許可の取得に協力したことに対する対価としての性質を有する経済的利益であると認められるから、「役務の対価としての性質」を有する雑所得に該当するというべきである。
(3)ある支出が雑所得の金額の計算上必要経費に算入されるためには、当該支出が、[1]雑所得の総収入金額を得るために直接要した費用であること、又は、[2]当該所得を生ずべき業務について生じた費用であることを要し(所得税法37条1項)、その判断に当たっては、関係者の主観的判断のみによるのではなく、当該支出をするに至った経緯、当該支出に係る当事者の関係、当該支出の性質、趣旨及び目的等の諸般の事情を総合的に考慮し、社会通念に照らして客観的に判断すべきところ、8,000万円を超えて本件交付金員を本件仲介者に支払った事実を認めることはできないことに加え、本件金員の支払の申入れがされて以降は、本件仲介者は、納税者とパチンコ店との話合いの場には同席しておらず、本件交付金員が問題解決のための報酬であるとの前提を欠くこと、本件交付金員が本件金員を得るために直接要した費用に該当するが不明であることからすれば、納税者の主張は採用できない。
4 参考法令
所得税法
一時所得 第34条
雑所得 第35条
必要経費 第37条


