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建物の長期賃貸契約解除で現状回復金
● 建物の長期賃貸契約解除で現状回復金
● 裁判所が不動産所得とみなす
ビルの賃貸契約について、中途解約にともない受け取った原状回復に代わる和解金が損害賠償金ではなく、不動産所得として税務署が課税したことを地方裁判所が適法とした。
| 税日 | 所得税 |
| 国側当事者 | 宇都宮税務署長 |
| 判決日等 | 宇都宮裁判所 平成17年3月30日判決 |
| 判決結果 | 請求棄却(確定) |
1 事件の概要
(1)納税者らは、平成4年5月2日、A百貨店との間で納税者らが共同所有する建物(百貨店の店舗用としてのもの。以下「本件建物」)を20年間賃貸する旨の建物賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」)を締結した。
(2)A百貨店は、業績不振を理由に平成9年9月12日、納税者らに対し、本件賃貸借契約書の中途解約条項の手続きに従って、書面により同契約の解約を申し入れた。
納税者らとA百貨店は、平成12年4月18日、本件賃貸借契約を平成11年6月末日で合意解約し、A百貨店が、納税者らに対して、本件賃貸借契約の解約に伴う原状回復に代わる和解金(以下「本件和解金」)、及び中途解約条項に基づく違約金及び特約賃料を支払う旨合意書を(以下「本件合意」)作成した。
(3)納税者らは、本件合意に基づき受領した金員を一時所得として確定申告を行った。
(4)課税庁は、本件合意に基づき受領した金員は、納税者らの不動産所得の総収入金額に該当するとして、納税者らに対して更正処分、及び過少申告加算税等の賦課決定処分(以下「本件課税処分」)を行った。
(5)なお、納税者らは、本件課税処分後に本件和解金は非課税である旨の更正の請求書を経た後(更正をすべき理由がない旨の通知処分が行われている。)、本訴を提起した。
2 争点
本件和解金の一部に所得税法上非課税とされる損害賠償金が含まれるか否か。
3 裁判所の判断のポイント
(1) 所得税法9条1項16号の規定が損害賠償金等を非課税とした趣旨は、損害賠償金は、受領者である納税者の心身、あるいは財産に加えられた損害を補償する金銭であって、実質的にこれらの金銭を取得したとしても、受領者である納税者は失われた利益を回復するのみで、これによって利得するわけではないので、このような金銭に担税力を見いだすことはできないためであると解される。
(2)本件和解金は、いわゆる和解金として授受されたものであるが、紛争当事者間で定めた金銭の支払・受領名目等その主観的意図により、和解金が課税対象となるか否かが左右されるとするのは、当事者の判断で課税の有無・内容が決せられることになり極めて不合理である。当該金員支払の実質的意味に着目して課税の有無を決すべきである。
(3)認定事実によれば、和解の交渉経過等においては、納税者らの基本姿勢は、本件賃貸借契約解約の拒絶であったことがうかがえるものの、A百貨店の納税者らに対する詐欺的行為の存否や、損害賠償金等の数額等が交渉の具体的な検討課題になったことはなく、和解金額の多寡の中心的な交渉は、すべて原状回復費用の枠組みの中でされていることが認められる。
(4)したがって、本件和解金は、本件建物から、賃借人であるA百貨店が撤退し、本件賃貸借契約を解除するに当たって、原状回復義務に代わる金銭として交付されたものである。納税者らは、本件賃貸借契約の終了によってA百貨店から賃料収入を得ることはできなくなるものの、新たな賃借人に賃貸し、失われた賃料収入を補てんするための建物改修費として原状回復費用を受け取っているものであって、納税者らは、得べかりし利益を喪失したに過ぎず、本件和解金はその収益の補償として実質的に所得を得たのと同一の結果となるものといわざるを得ない。
(5)以上によれば、本件和解金に非課税となる損害賠償金等が含まれているとは認められず、A百貨店が契約解除時に納税者らに交付する原状回復費用が不動産業務の休止、廃止等により当該業務の収益の補償として取得する金員として不動産所得に当たることは明らかである。
4 参考法令
所得税法
第9条1項16号
所得税法施行令
第94条1項2号


