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増えるストック・オプション導入

税制上の優遇措置も魅力

野村証券金融経済研究所の調べによると、上場企業が今年4月から7月までに実施した自社株買いは総額で1兆6,800億円に上り、前年よりも倍増している。背景には、企業買収に対する防衛策として自社株買いを進めている会社が増えていて、その買い集めた自社株をストック・オプションに回して人材確保に活用しているという事情がある。

ストック・オプションについては、じつは、中小企業の間でも導入を検討するところが増えている。それは、やはり人材確保に最も役立つツールであるからだ。

ストック・オプションとは、従業員持株制度のように企業が従業員に株式を持たせることとは違って、あくまでも「有利な条件で会社の株式を購入する権利」を与えるというもの。たとえば企業が1万株を1株500円で購入する権利(ストック・オプション)を従業員に与えたとする。その従業員が1株2000円のときに売却すれば、1株あたり2000円−500円=1500円の売却益が発生し、その従業員はこの取引で1,500万円の利益を得たことになる。こうしたストック・オプションについては、政策として税制上の優遇措置が設けられている。すなわち、税制上適格ならば、権利行使時のみなし所得課税は非課税となり、株式売却時に申告分離課税(26%)を適用できるというものだ。これをストック・オプション税制という。

最高裁が税務署の加算税取り消す判決

ストック・オプション(自社株購入権)で得た利益が一時所得から給与所得に取扱いが変わる前に申告し、税務署によって過少申告加算税を課された外資系企業の元役員らの課税処分取り消しを求めた7件の訴訟で、最高裁第3小法廷が10月24日、約34万〜約2億1200万円の課税処分取り消しを命じた。同小法廷は「元役員らの責任といえない客観的事情があり、加算税を課すことは不当で酷だ」と述べ、加算税を正当とした2審判決を破棄し、元役員らの勝訴が確定した。

訴えていたのは、マイクロソフトや旧コンパックコンピュータの日本法人元役員らで、彼らは、海外の親会社から受け取ったストック・オプションで得た利益が「給与所得」と確定する前の1997年から2001年にかけて、所得の2分の1に所得税が課税される「一時所得」として申告していた。所得区分について国税庁は、2002年6月の通達で初めて変更を明記している。そのため、同小法廷は国税通則法で加算税を課すべきでない場合とされる「正当な理由」に当たると結論付けた。ストック・オプションに対する課税については、これまで100件以上の課税取り消し訴訟が起こされたが、最高裁は昨年1月、利益は給与所得だとする判断を示している。今回の判決は、国税庁の見解が定まらない時期に誤った申告をした納税者にペナルティーまで課すことが適当かどうかが争点だったことから、所得区分の判定をめぐって争われたこれまでの裁判とは性質が異なる。

人材確保のツールと言われる由縁

ストック・オプションを導入する企業においては、役員や管理職の一部に付与するのが一般的。幹部ポストに限りがあることや幹部同士の競争意識をあおるのがその目的といわれる。しかし、自社へ帰属意識を高めるため、全従業員に付与する場合もある。権利を与えられた人が功績をあげれば、会社は発展し同時に株価も上がる。それによってストック・オプションを持つ人の利益も大きくなるというストック・オプションの特性を全従業員で共有しようというわけだ。

そもそも、ストック・オプションを活用すれば、有能な人材を確保しやすくなるといういわれは、そうした役員の経営努力や従業員の勤労意欲を向上させる効果を生む点にあると言っても過言ではない。日本企業にとって、従業員に対する報奨制度というと昇給や賞与だけだったが、ここへきてストック・オプションという自社株を用いた報奨制度が日本企業にも根付き始めたわけだ。

ただし、同制度を導入することによるリスクも当然ある。たとえば、企業の看板や仕事の内容に対する愛着よりもストック・オプションによる金銭的メリットだけを求めて入社した従業員が、権利を行使して資金を得たらたちまちいなくなるというケースが考えられる。その従業員が多くの取引先から信頼を得ていたりすると、企業のダメージは計り知れない。また、会社の株価が必ず上昇するとは限らない。業績と株価がリンクしないことは、当然あり得る。そうなると従業員のモチベーションは低下することも知っておかなければならない。さらに、大幅に株価が値上がりすることによって、発生するインサイダー取引への対応も検討しておく必要がある。

税務署との争いは気にする必要なし

ストック・オプションの導入に躊躇する会社がないわけではない。それは、外国の親会社から日本法人の役員がもらったストック・オプションなど、税制適格ではないストック・オプションで、ここ数年税務署と裁判沙汰にまで発展するケースが相次いでいるからだ。

その裁判の多くが、役員や従業員に企業が与えるストック・オプションは原則として「給与所得」と税法上定められているのに、ストック・オプションで得た利益を役員や従業員が、所得の半分に所得税が課税される「一時所得」として申告したために争いとなっている。その争いの発端は、国税当局の職員が税務の解説本の中で、ストック・オプションで得た利益は「一時所得」と記述していたことが過去にあった点にある。しかし、国税庁が通達で2002年に給与所得と定めたことから、納税者が提訴して「一時所得」を主張しても、給与所得とする国税側の主張を裁判所が受け入れるようになっている。

こうした裁判の行方を見守っているストック・オプションを導入している会社の中には、税制非適格だったものを税制適格に変更するところが出てきている。そのため、国税庁ではさきごろ、「ストック・オプション契約の内容を税制非適格から税制適格に変更した場合」という取扱いを公表、税制非適格だったものを途中で税制適格へ変更した場合については、非課税措置の適用を認めないようにした。いわゆる手のひら返しを排除したわけだ。

ストック・オプションを導入する場合は、それで従業員などが得た利益は給与所得であるということを認識しておくこと。次に、税制適格のものを従業員に付与するときには、それなりの適用要件を満たすように注意する。さらに、付与後のリスクを回避するために企業側は、いくらで何株を買えるか(権利行使価格、株式数)の設定、いつ権利を行使できるようにするか(権利行使期間)といった組み合わせの設計を十分に検討するということを忘れてはいけない。

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