HOME > さむらい、かく語りき > 検証!交際費課税
検証!交際費課税
(1)平成18年度税制改正で大幅緩和
平成18年度税制改正では、交際費課税が大きく緩和された。資本金1億円以下の中小企業に認められている「交際費400万円までの部分について90%損金算入」とする特例が2年延長されたうえ、損金不算入となる交際費の範囲から「1人当たり1回5千円以下の一定の飲食費」が除外されたのだ。
よい商売ができる都度「一杯飲む」という日本のビジネス習慣は、バブル経済時代にまたたく間にエスカレート。国はこれを問題視し、間接的に支出を抑制するために交際費に重課税を行った。つまり交際費課税は今日まで懲罰的な税制として進化してきた。このため交際費は原則として損金不算入扱いだ。
しかし、資本金1億円以下の中小企業については多少フォローされている。そのフォローがなければ、中小企業と大企業は、あまりに営業環境に差がでてしまうからだ。売上割戻しや販売手数料、広告宣伝費、寄付金などのカードを次々に出せる大企業と違って、資金力に乏しい中小企業にとって交際費は、取引先をキープしておくための重要なツールといえる。
不況続きのこんな時代だからこそ、大事な得意先をキープしておく手段として、光を放つ交際費。今回の税制改正で交際費課税が緩和されたことで、夜のネオン街が再び活況を取り戻すのではと飲食産業からの期待は大きい。
(2)「1人当り1回5千円以下」なら損金
平成18年度税制改正では、損金不算入となる交際費の範囲から「1人当たり1回5千円以下の一定の飲食費」が除外されることになった。
ここでいう「一定の飲食費」とは、「役職員の間の飲食」を除く飲食のこと。つまり、同じ会社内の役員や従業員同士での飲食でない限り有効というわけ。だから、連結子会社その他関連会社の役員との飲食でも、基準金額以下である限り交際費から除かれる。
この「1人当たり1回5千円以下」は、交際費の損金算入枠というものではなく、そもそも交際費ではないものとして扱われる。たとえば、取引先の社長と2人でホテルのレストランでランチを食べた場合、これまでなら思いっきり交際費の範疇だが、かかった費用が1万円以下(1人当り5千円以下)なら、税務上は交際費から除外されるというわけだ。そして、これまで「交際費」として処理してきた「5千円以下の飲食費」は、内容に応じて「会議費」や「福利厚生費」などとして処理することになる。
注目すべきは、この「5千円以下」の取り扱いは企業規模を問わないということ。つまり、中小企業だけでなく、交際費が全額損金不算入扱いとされている資本金1億円超の大企業にも適用される。これにより、日本中の会社がいっせいに「一人当たり5千円以下の一定の飲食費」を支出し始めることが予想されており、飲食産業にとっても朗報といえる。
この「1人当たり1回5千円以下」の基準が適用されるのは、今年4月1日以後に開始する事業年度から。飲食店の店先に「5千円ポッキリ!全額損金プラン」などと謳った看板がかかる日も近いかもしれない。
(3)会議費との区別
交際費課税の緩和については、「1人当たり5千円以下」という具体的な表現に注目が集まった。ここまで具体的な数字が出てきたのには、それなりの経緯がある。
原則として損金不算入とされている交際費については、これと隣接する費目との区別をめぐりトラブルになるケースが絶えなかった。たとえば会議費。交際費か会議費かについてはこれまで実態を見て判断されてきたが、その境界線は非常に微妙だった。
全額損金算入できる会議費の取り扱いとしては、「会議に際して社内又は通常会議を行う場所において、通常供与される昼食の程度を超えない飲食物等の接待に要する費用は、原則として措置法令第37条の5第2号に規定する"会議に関連して、茶果、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用"に該当する」ものとされている。ここでいう「会議」には、来客との商談や打ち合わせ等が含まれる。かなり細かく規定されているようだが、実際に会議費と認められるためには、会議の実態があることを会社が証明できなければならなかった。
それが、今回の改正で「1人当たり5千円以下」なら、実態が「会議」でなく「接待」であっても、交際費から除外されることになったわけだ。だからここまで明確に金額基準が設けられたことは実に画期的なことといえる。
(4)調査シーンに影響も
平成18年度税制改正では、交際費課税について「1人当たり5千円以下」という緩和措置がとられ話題を呼んでいる。注意したいのは、「5千円以下」というのは基礎控除のような位置づけではないということ。つまり、取引先の飲食で1人当り6千円かかった場合、5千円を超えた部分の「1千円」が交際費課税の対象になるというものではない。5千円を超えたら根っこから、つまり6千円の支出なら「6千円」が交際費扱いということになる。
この点だけ見ると厳しいようだが、逆に「5千円以下」の飲食代であれば実態がコテコテの交際費でも、交際費から除外されるということだ。従来は、どんなに少額でも実態が交際費なら「交際費」として扱われたことを考えるとスゴイことである。
ただし、会社側の立証責任が強く問われることになりそうだ。一般に、飲食店で発行してもらう領収書には、人数や各人の身分は表示されない。取引先の社長と2人で会食して合計1万円支払ったとしても、領収書には「飲食代1万円」と表示されるのみ。「2人で来店だから一人当たり5千円です」とは書いてくれない。今後は人数や相手の身分を記録しておく必要が出てくるだろう。
とはいえ、妻と2人で1万円分の食事をしても、「取引先の社長と2人で会食」と記録する違法行為も出てきかねないため、今後は税務調査シーンでも領収書の入念なチェックや取引先の半面調査に重点が置かれるようになっていくと見られている。
