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サービス残業と年俸制
最近、いわゆるサービス残業が発覚し、行政機関に「2年分を遡って数百万円の支払を命じられた」という新聞報道をよく見かけます。従業員が、直接行政機関へ訴えるケースも増えてきているようです。サービス残業の原因を探ってみると、単なる残業手当の不払いは別にしても、経営者の誤解も多くあるようです。例えば「年俸制の場合は時間外手当を支払わなくても問題ない」などと考え違いをしているケースです。今回は、年俸制と時間外手当を中心として、サービス残業について考えてみましょう。
法律ではどうなっているの?
経営者の話を聞いていると、年俸額については、「時間外手当を支払わなくても良い」「時間外手当がないことは従業員も合意している」などという声を耳にします。時間外の残業になるかならないかについては、労働基準法で規定されており、年俸制であっても時間外手当を支払わなくてはならないとしています。従業員を働かせることができるのは原則1日8時間、1週間40時間までと定められており、それを超えて働かせた場合には、年俸制であっても当然に時間外の残業となり、一定率(2割5分)以上の時間外手当を支払わなければなりません。
行政指導が入るとどうなるの?
残業時間に基づいた時間外手当が支払われていなかったり、時間外手当が法定未満であったりするサービス残業は、仮に従業員本人の同意を得ていたとしてもその同意自体が無効とされ、行政機関の指導が入れば時間外手当の支払いを命じられることになります。この場合に、経営者が時間外手当を支払わなくても良いと誤解していたので、その分、年俸額を高く設定していたとしても、年俸額をベースとして時間外手当を計算されることになります。また、あらかじめ時間外手当相当分を含んで雇用契約しているケースもありますが、多くは含まれているとされる金額が契約上明確でない点が問題となっています。この場合でも、年俸額をベースとして、時間外手当を計算される可能性が高いです。
契約書等の見直しを!
御社が年俸制を導入しているのであれば、上記のような状態になっていないか。一度、点検してみましょう。そして、必要があれば、雇用契約書の作成や変更をすることをお勧めします。あらかじめ時間外手当を含んで契約する場合は、含まれる時間外手当の時間と金額を明確にしておくこと、実際の時間外手当が含まれる一定部分を超えた場合には、その超えた部分については時間外手当を支払うことがポイントです。ただし、契約を変更するにあたっては、不利益な変更になる可能性があるため、必ず書面で従業員の同意を取るようにしてください。
行政ってどんなところ?
ここでの行政機関とは、労働基準監督署のことですが、大雑把に言うと労働基準法がきちんと守られているかどうかを監督する役所です。この機関には労働基準監督官という役人がおり、労働基準法違反に関しては警察と同じように逮捕できる権限を持っています。
そして、会社に立ち入って違反の有無を調査し、問題があれば是正を求めることができます。具体的には、関係帳簿書類を提出させたり、経営者や従業員を監督署に出頭させて尋問して実態を把握し、最終的な判断を下します。もし違反の事実があると判断すれば指導や是正勧告を行い、これを受けた経営者は所定の期限内に指摘を受けた事項を是正し、報告書を提出しなければなりません。これを無視すると書類にとどまらず、最悪の場合は逮捕されて検察庁送りになることもあり得ます。
できることから改善を!
最近の傾向として、自らの権利を強く主張する従業員は増えつつあります。彼らの多くは、会社には直接、申し立てをせず、退職する間際に労働基準監督署に訴えて問題を解決しようとします。
なかでもサービス残業に関する申告件数は急増しており、行政においても、「健康障害や過労死につながる危険がある」として取り締りの強化に力を入れています。経営者にとって法律を知らなかったではすまされない時代が訪れています。労務管理体制を違法な状態のままにしておくことは非常に危険なことであり、万が一サービス残業について遡って支払い命令を受けることがあれば、経営自体をおびやかすことにもつながりかねません。この機会に良く点検を行い、できることから改善を検討してみましょう。


